JULÄINE が最近、台湾で正式に発売されました。発表の軸ははっきりしていて、粒子を均一な球状微粒子にしたので結節になりにくい、というものです。
まず私の立場をお伝えします。当院では JULÄINE を施術しておらず、今回新たに発売されたコラーゲン誘導剤もいずれも扱っていません。私が外来で向き合っているのは反対側、注射のあとにしこりができて摘出を求めて来られる方々です。ですからこの記事では仕上がりの良し悪しは評価せず、一つの問いにだけ答えます。結節になるのか、ということです。
この問いには、メーカー自身が台湾の衛生福利部に承認された中国語の添付文書の中ですでに答えています。
重要ポイント: 「結節になりにくい」は確率の話です。JULÄINE の承認添付文書は、結節と晩期肉芽腫を起こりうる副作用として挙げており、その時間枠は注射後 14 か月まで書かれています。
まず、どの製品を打ったのか確認する:知林・珠嵐・JULÄINE は同じ製品です
この確認は飛ばされがちですが、多くの方がここでつまずきます。
「知林」はメーカーが台湾市場で使っている販売名で、公式サイトでは「瑞典知林(スウェーデンの知林)」と表記され、英語のブランド名は JULÄINE です。台湾の TFDA(Taiwan Food and Drug Administration、台湾食品医薬品局)の医療機器許可証データベースで「知林」と検索しても、何も出てきません。承認された中国語の品名は「"諾德貝爾"珠嵐植入物」、英語名は "Nordberg" Juläine、許可番号は衛部医器輸字第038584号で、2025 年 12 月 19 日に第 3 等級の医療機器として発行されています。
許可証の保有者は威康有限公司です。製造については、添付文書に「スウェーデン・マルメの Magle Chemoswed AB が Nordberg Medical AB のために製造」と書かれています。
成分は添付文書に明記されています。凍結乾燥粉末 1 瓶あたり、PLLA(Poly-L-Lactic Acid、ポリ-L-乳酸、スカルプトラの主成分)150 mg、CMC(Carboxymethyl Cellulose、カルボキシメチルセルロース)45 mg、マンニトール 145 mg を含み、注射前に滅菌水または生理食塩水で溶解します。主成分はスカルプトラと同じ PLLA で、違いは粒子の作り方にあります。
ご自身で確認するなら、「珠嵐」または「038584」で検索すれば見つかります。該当データの効能欄には「承認された中国語説明書のとおり」と書かれています。これは適応が添付文書に記載されているという意味で、承認された適応がないという意味ではありません。以下に引用する文はすべてこの添付文書からのもので、日本語訳は私によるものです。
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| JULÄINE | Löviselle | |
|---|---|---|
| 中国語の販売名 | 知林 | 艾維嵐 |
| 承認文書上の品名 | "諾德貝爾"珠嵐植入物 | ポリ乳酸顔面フィラー |
| 承認機関と番号 | 台湾衛生福利部、衛部医器輸字第038584号 | 中国国家薬品監督管理局(NMPA)、国械注准20213130276 |
| 製造 | スウェーデン・マルメ、Magle Chemoswed AB | 中国・長春、聖博瑪 |
| 承認された用途 | 鼻唇溝 | 真皮深層、中等度から重度の鼻唇溝のしわ |
| 台湾の許可証 | あり | 2026 年 10 月時点で見つからず |
Löviselle との関係:公開文書で言えるのはどこまでか
ネット上には、この 2 つは同じものだという声も、まったく別物だという声もあります。ここでは文書で確認できることだけを書きます。
1 つ目は、2021 年の長春聖博瑪の資金調達に関するプレスリリースです。そこでは Nordberg Medical AB を聖博瑪のスウェーデンにある完全子会社と呼び、欧州の CE マークを取得したことで Löviselle の製法と技術が欧州で実用化されたと述べています。
2 つ目は、2025 年に Polymers 誌に掲載された、2 種類の PLLA の溶解特性を比べた実験室研究です(Kubik 2025、PMID 40647790)。著者は材料の説明の中で、Juläine と LoviSelle を PLLA-LASYNPRO という同じ技術名の下に並べて記載しています。
3 つ目は台湾の承認文書で、JULÄINE の製造所はスウェーデンと記載されています。2022 年以降に両社の資本関係がどう変わったかについては、公開資料を見つけられませんでした。
言えるのはここまでです。同じ技術プラットフォームから生まれた 2 つの製品が、別々の国で承認され、別々の工場で製造されている。注射したあとの組織での振る舞いが同じかどうかは、両者を直接比べた研究がなく、私が結論を代わりに出すことはしません。
Löviselle は 2021 年に中国で承認され、承認文書上の適用範囲は真皮深層への注射による中等度から重度の鼻唇溝のしわの矯正です。台湾の許可証データベースを中国語名・英語名・メーカー名で検索しましたが、見つかりませんでした。
添付文書自体が記す時間枠:1〜14 か月、そして晩期肉芽腫
ここから添付文書の中身です。
「治療の副作用」の項には、こう書かれています。「ポリ-L-乳酸フィラーの臨床研究および市販後調査によると、注射後 1〜14 か月以内に皮膚結節、晩期肉芽腫、皮下丘疹または皮膚硬化が起こる可能性があります。」
この一文には、立ち止まって見るべき点が 2 つあります。
1 つ目は、冒頭が「ポリ-L-乳酸フィラーの臨床研究によると」となっていることです。添付文書は自らを PLLA という製品群全体の経験の中に置いており、粒子が球状だからといってこの記述を外してはいません。同じく粒子の均一さを売りにする台湾製 PDLLA のネオフィレラも、添付文書にほぼ同じ時間枠を記しています。
2 つ目は、同じ文の後半です。推奨される溶解と注入の手技に従い、皮膚の薄い部位を避け、患者が注射後にマッサージの手順を守ることで、「最初の 6 週間以内にこれらの事象が起こるリスクを下げることができる」と書かれています。予防策がカバーしているのは最初の 6 週間です。3 か月目、8 か月目に出てきたしこりについて、この文は何も約束していません。
警告の項にも結節の原因が書かれています。注入は真皮深層または皮下層に限ること、浅すぎる注入は注射部位に丘疹や結節を作る可能性があること、注入量が多すぎる場合や溶解を誤った場合にも起こりうること。使用上の注意ではさらに、皮膚の薄い部位では丘疹と結節のリスクが高まると注意を促しています。
重要ポイント: 注射から半年たって気づいたしこりも、添付文書が示す時間枠の内側にあります。遅れて出たしこりは、「時間がたちすぎている」という理由だけで除外せず、画像で確認する価値があります。
「球状微粒子」で変わったこと、変わっていないこと
まず、うまくいっている点からです。初期の PLLA 製品は粒子の形が不規則でしたが、JULÄINE は粒子を大きさのそろった球状にしています。実験室の研究 2 本がこの方向を支持しています。1 本は、この微粒子が溶解後に小さく均一な粒子になり、旧来の PLLA のように固まりにくいことを示しました(Kubik 2025、PMID 40647790)。もう 1 本はヒト線維芽細胞を使った比較で、微粒子は免疫関連の遺伝子をほとんど動かさず、薄片状の PLLA は炎症関連の遺伝子発現を引き起こしました(Geara 2025、PMID 41216698)。どちらも試験管内の実験で、人での比較はありませんが、方向としては筋が通っています。
問題は、PLLA の結節の原因が一つではないことです。PLLA の有害事象を整理した 2014 年の専門家レビューは、これを 2 種類に分けています(Vleggaar 2014、PMID 24719076)。丘疹や結節は、多くが不適切な溶解や注入位置から生じます。本当の肉芽腫は材料に対する免疫反応で、頻度は約 0.01〜0.1%、注射から数か月、場合によっては数年たってから現れることがあります。
粒子の形が関わるのは、1 つ目の種類の中の一要因です。ほかの要因はすべて残っています。
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| 結節に影響する要因 | 球状微粒子で変わったか |
|---|---|
| 粒子の形と大きさ | 変わった。これが主な改良点 |
| 希釈と溶解 | 変わらない。施術者しだい |
| 注入の深さ(浅すぎる) | 変わらない。施術者しだい |
| 1 か所あたりの量 | 変わらない。施術者しだい |
| 部位(皮膚が薄い、よく動く) | 変わらない。添付文書自体も皮膚の薄い部位はリスクが高いと注意 |
| 個人の免疫反応 | 変わらない |
次に人での研究です。JULÄINE について現時点でいちばん充実しているのは、2026 年のスプリットフェイス研究で、95 人を 12 か月追跡し、結節も肉芽腫も出ませんでした(Ponzo 2026、PMID 41662390)。良い結果ですが、何と比べたのかを見る必要があります。対照側の顔に打ったのは生理食塩水で、別の PLLA ではありません。この研究が答えているのは「JULÄINE を打つことは打たないことと比べて安全か」で、「JULÄINE は旧来の PLLA より結節が少ないか」には答えていません。
もう一つは時間の問題です。発表されている JULÄINE の研究は、いずれも追跡が 12 か月以下ですが、添付文書自体の時間枠は 14 か月までです。PLLA の遅発性反応については、潜伏期間が平均約 19 か月、6〜60 か月の幅で記録された症例集積研究があります(Alijotas-Reig 2009、PMID 19797889)。12 か月の研究では、その期間は見えません。
逆向きのデータもあります。2026 年の動物実験では、球状 PLLA の周囲に持続的な混合型の炎症が見られました(Ye 2026、PMID 42918797)。ラットでの結果で、JULÄINE に限った研究でもないため、私はこれを結論としては扱いません。「球状なら炎症が起きない」とはまだ言い切れない、ということを示すだけです。
私の外来で診ているのは Löviselle で、JULÄINE ではありません
ここは最初にはっきりさせておきます。私の外来で診ている結節の症例は Löviselle であり、JULÄINE ではありません。
ここ数年、中国本土や香港の患者さんが、中国本土で Löviselle を打ったあとに外来を訪れています。多くは注射から 3 か月から半年たって、しこりに気づいています。これまで扱ってきた他のコラーゲン誘導剤による結節と比べて、明らかな違いは見られません。
こうした患者さんには共通した状況があります。ある場所で打ち、別の場所でしこりが出てくる。最初に施術した医師はその後を見ることができず、患者さんも戻って相談するのが難しく、しこりはそのまま長引きます。これは製品がどこで作られたかとは関係がなく、国境をまたぐ施術であればどれでも起こりうることです。
あわせてお伝えすべきことが 2 つあります。私のところに来られるのは、もともと問題が起きた方々ですから、私の外来から Löviselle の結節発生率はわかりません。そして、同じ技術プラットフォームであることは同じ製品であることを意味しません。Löviselle の症例から JULÄINE を推論することはできません。
JULÄINE が台湾で許可を得てから、まだ 1 年もたっていません。遅発性の結節はそれより長い時間をかけて見えてくるものなので、「まだ見ていない」は時間が足りないというだけで、どちらの方向の根拠にもなりません。
承認された用途は鼻唇溝のみ、それ以外の部位では摘出の計画が変わります
添付文書が記す使用目的は、浅いものから深いものまでの鼻唇溝を充填し、結合組織の欠損や瘢痕による皮膚のくぼみを補うことです。
用量と回数も書かれています。注入 1 点あたり 0.1〜0.2 mL、片側の鼻唇溝で合計 1.5 mL まで、両側で 3 mL まで、治療は最大 3 回で間隔は 2〜4 週間。添付文書には、私も同意する 2 つの記述があります。皮膚のくぼみは過剰に充填すべきでないこと、そして鼻唇溝を一度に完全に埋める必要はなく、その後しだいに自然に埋まっていくこと。また、唇には注入すべきでないと明記されています。
発売時、メーカーは JULÄINE の位置づけを、ボリュームを足すことではなく「自然な引き締め」だと説明しました。添付文書の記載は、くぼんだ皮膚の部位のボリュームを回復させるのに適しており、適応は鼻唇溝、というものです。すでに打った方にとって、この差が実際に意味するのは次のことです。顔全体、こめかみ、目の周りに打った場合、それは承認範囲の外です。それは施術した医師の判断ですので、どの層に、どの位置に、合計どれだけ打ったかを直接尋ねることができます。
この情報は摘出の計画にそのまま関わります。皮膚の薄い部位は鼻唇溝とは別の話です。目の周りは皮膚が薄く、血管が密で、操作できる空間も狭く、材料が浅く散らばっていれば、処置にはいっそう繊細な加減が求められます。
すでにしこりに触れる場合、次に何を確認するか
まず時期を分けて考えます。注射後数週間の腫れの一部は溶解に使った液体で、吸収されていきます。これは想定された経過です。コラーゲン誘導剤による新しいしこりは、私はふつう約 3 か月、まず経過を見て、小さくなっているのか、安定しているのか、大きく硬くなっているのかを確かめます。
本当に注意すべきなのは逆の経過です。ある部位が落ち着かず、むしろ盛り上がって硬くなっていく、あるいは赤く腫れることを繰り返す場合です。
そのときは、もう一本注射するより、まず超音波ではっきり見ることが大切です。見るのは、材料がどの層にあるか、範囲の大きさ、線維性の被膜に包まれているかどうか、血管や神経との距離です。この 4 つは指で触ってもわかりませんが、次に何ができるかを決めます。PLLA の結節の分類と、摘出が適する時期については、スカルプトラの肉芽腫と遅発性結節でより詳しく書いており、JULÄINE と Löviselle にも同じように当てはまります。
ヒアルロニダーゼ(医師の対面診察による評価を経て使用します)はヒアルロン酸にしか作用せず、PLLA には効きません。ステロイドは炎症中の結節を落ち着かせることができますが、繰り返し打つと周囲の脂肪が萎縮してくぼみが残り、材料はその場に残ったままになることがあります。詳しくはステロイドで消えなかったスカルプトラのしこりをご覧ください。
摘出が必要な場合、私は超音波ガイド下で約 2 mm の針穴から行い、切開による外科的切除は行いません。腫れと内出血はおよそ 2〜3 週間、全体の回復には約 3 か月かかります。この方法についてはフィラー修復の診療ページで説明しています。
よくあるご質問
知林と珠嵐は同じ製品ですか?
はい。知林はメーカーが台湾で使っている販売名で、衛生福利部が承認した品名は「"諾德貝爾"珠嵐植入物」、許可番号は衛部医器輸字第038584号です。許可証を調べるときは承認品名か番号で検索してください。
JULÄINE と Löviselle は同じものですか?
公開文書では両者は同じ技術プラットフォームから生まれていますが、別々の国で承認され、別々の工場で製造されています。JULÄINE は台湾の許可証があり、製造所はスウェーデンです。Löviselle は中国で承認された製品で、台湾の許可証は見つかりません。人での振る舞いを両者で直接比べた研究はありません。
JULÄINE は本当に結節にならないのですか?
承認添付文書はそうは書いていません。注射後 1〜14 か月以内に皮膚結節、晩期肉芽腫、皮下丘疹、皮膚硬化が起こりうると書かれています。球状微粒子が減らしたのは粒子の形という一要因で、希釈、深さ、量、部位、個人の免疫反応は引き続き結果に影響します。
打ってから何か月も何もなければ、もう安全ですか?
そうは言えません。添付文書の時間枠は 14 か月までで、文献にはさらに遅れて出た PLLA の遅発性反応も記録されています。注射から半年たって気づいたしこりも、超音波で確認する価値があります。
中国本土で Löviselle を打ち、いましこりがあります。台湾で対応できますか?
評価は可能です。できれば施術の記録をお持ちください。製品名、注射した部位、合計量などです。記録がなくても問題ありません。超音波で材料がどの層にあり、範囲がどれくらいかがわかり、摘出の計画はそこから始まります。
JULÄINE や Löviselle はヒアルロニダーゼで溶かせますか?
できません。ヒアルロニダーゼはヒアルロン酸にしか作用せず、PLLA にも、粒子の周りに体が作ったコラーゲンや線維性の被膜にも効きません。結節が安定して被膜化したあとは、物理的な摘出が現実的な方法です。
ご自身の状況を確かめたい方へ
JULÄINE、Löviselle、その他のコラーゲン誘導剤を打ったことがあり、いましこりに触れる、あるいは同じ場所が繰り返し腫れるという方は、まず最初にやることはシンプルです。超音波でフィラーを診る医師を探し、材料がどの層にあり、範囲がどれくらいで、被膜があるかどうかを確認することです。
その情報があってはじめて次の一手を話し合えます。「様子を見ましょう」と「もう一本打ちましょう」の間を行き来し続ける必要はありません。ご自身の状況についてのご相談は、ご相談予約からどうぞ。
コラーゲン誘導剤の作用の仕組みとリスクについてはコラーゲン誘導剤の作用原理に、次世代のコラーゲン注射が問題を起こしたときに元に戻せるかどうかは次世代コラーゲン注射の選び方にまとめています。
参考資料
- 台湾衛生福利部食品医薬品局 医療機器許可証:衛部医器輸字第038584号「"諾德貝爾"珠嵐植入物」およびその承認中国語説明書(110.5.1 版)。
- 中国国家薬品監督管理局 医療機器登録:国械注准20213130276「ポリ乳酸顔面フィラー」。
- 長春聖博瑪 2021 年資金調達プレスリリース(投中網、2021 年 7 月 15 日)。
- Vleggaar D, Fitzgerald R, Lorenc ZP. Understanding, avoiding, and treating potential adverse events following the use of injectable poly-L-lactic acid for facial and nonfacial volumization. J Drugs Dermatol. 2014. PMID 24719076
- Ponzo M, et al. Efficacy and Safety of Poly-L-lactic Acid for Midface Rejuvenation: A 12-Month Split-face Controlled Evaluation. Aesthet Surg J. 2026. PMID 41662390
- Alijotas-Reig J, et al. Late-onset immune-mediated adverse effects after poly-L-lactic acid injection in non-HIV patients. Dermatology. 2009. PMID 19797889
- Kubik P, et al. Comparative Analysis of Reconstitution and Solubility of Two Poly-L-Lactic Acid Fillers for Medical Applications. Polymers (Basel). 2025. PMID 40647790
- Geara J, et al. Poly-L-Lactic Acid Microspheres Promote Skin Rejuvenation via Enhanced Fibroblast Function. J Biomed Mater Res A. 2025. PMID 41216698
- Ye L, et al. Multiscale evaluation of collagen-stimulating materials. NPJ Regen Med. 2026. PMID 42918797






